みんなの乳がん

春乃れぃプロフィール

作家・コラムニスト
数年前、乳がんを発症。温存手術により、無事摘出。現在、経過を観察(?)している。

台湾人と日本人のハーフとして台湾に生まれ、幼少~思春期を米ロスで暮らす。
2005年ケータイ書籍「恋愛博打」で作家デビュー。
歯に衣着せぬ毒舌がうけ、その後も「起動戦士 濡れ男」「女王さまがロバに鞭」などのケータイ書籍や雑誌コラム、紙書籍などを中心に活躍。
並み居る有名作家人を押さえ、各ケータイ書籍サイトの売り上げランキングに続々とベストテン入りし話題となる。
著書に「モテれ。」「魔性れ。」

魔性れ。

「濡れ男-nureo-」(モバイルメディアリサーチ)「彼のセリフでわかる男ゴコロ」(大和出版)などがある。

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乳がんコラムアングリーおっぱい

イラスト・春乃れぃ

001話 | 002話 | 003話 | 004話 | 005話 | 006話(最終回)

6話

『万が一の時、あなた本人への告知を希望しますか?』
と、書かれた問診表の“はい”の欄にマルをしたことを、今さら後悔した。

再検査をしても、
セカンドオピニオンを受けても、
やっぱりあたしは――乳がんだった。

手術は乳房を残す、『温存』で行うことが決まった。
不安材料の1つになっていた手術費用は、お世話になっている出版社さんから、印税の前借りをすることで問題はなくなった。

すべてが決まってから、あたしは婚約者である彼にこれまでのことと、これからのことを報告した。

「あたし乳がんやねん。近々手術のために入院するわ」
「――それ、本当のこと?」
「もちろん!」
「どうして言ってくれなかったの、って今さら言っても遅いから、これからは一緒に頑張ろう。それだけは約束して」

***

手術は、あっという間に終わったらしい。
そしてあたしは、友人のニューハーフやゲイたちが見守る中、ずううううううっと眠っていたらしい。

入れ替わり立ち替わりに訪れる、“一風変わった面々”に、看護士さんたちは、「この人(あたしのこと)は、どういう人なんだろう」と不思議そうな顔であたしを見ていたらしいけれど――とにもかくにも、無事に手術は終わったのだ。

「痛む?」
「なんか、腕と胸筋あたりが痛むような気がする」
「でも大丈夫よ。オッパイは残ってるから。ワタシタチ、軽く触っちゃった!」
「触んなよ……」

***

まさか、あたしが『ガン』と闘うことになるだなんて、思ってもみなかった。根拠もないし、すごく大袈裟な言い方になるけど、『ガン』はあたしから最も“遠い病気”だと思ってた。

告知された時は、目の前が本当に真っ暗になった。
「ウソやろ?」って、思わずタメ口で聞き返してしまったほど。

大きなオッパイを、「ジロジロ見られるから、イヤやわー」と何度も思ったこと。
一時期流行ったチビTシャツが似合わないオッパイを、「半分の大きさでええわ」と思ったこと。
欲しい! と思ったトップスを、オッパイが邪魔で泣く泣く諦めることになった時に、「マジで、こんな乳いらねー」って言ったこと。

オッパイ様(?)への数々の無礼を、冗談抜きで心から詫びた。

「いらないとか、邪魔だとか言ったり思ったりしてごめんなさい。もう2度と言わないし思わないから、神さま……お願いです。どうかあたしから、“全部のオッパイ”を奪わないでください」

願いが通じたのかどうかは分からないけれど、
あたしの左胸は温存手術によって、無事にまーるく残っている。

***

今年の3月に、乳がん検診に行ってきました。
やっぱり未だに緊張します。やっぱり未だに検査の結果を聞くのは怖いです。
たぶんこれから先、何度検診を受けても、あたしは同じように緊張をし、そして怖い思いをすると思う。

あなたが乳がんになったら、その乳がんと闘うのはもちろんあなたです。だけど、あなたのことを愛してくれている家族や友だちや恋人も、やっぱりその乳がんと戦うことになるんです。

早期発見、早期治療に勝るもの無し。

まずは検診を受けてください。
あなたのオッパイが、今日も明日も1年後も笑っていられるように。

春乃れぃからの、連載最後のお願いです。

「アングリーおっぱい。~たまには乳の言うことも聞け~」完