みんなの乳がん

春乃れぃプロフィール

作家・コラムニスト
数年前、乳がんを発症。温存手術により、無事摘出。現在、経過を観察(?)している。

台湾人と日本人のハーフとして台湾に生まれ、幼少~思春期を米ロスで暮らす。
2005年ケータイ書籍「恋愛博打」で作家デビュー。
歯に衣着せぬ毒舌がうけ、その後も「起動戦士 濡れ男」「女王さまがロバに鞭」などのケータイ書籍や雑誌コラム、紙書籍などを中心に活躍。
並み居る有名作家人を押さえ、各ケータイ書籍サイトの売り上げランキングに続々とベストテン入りし話題となる。
著書に「モテれ。」「魔性れ。」

魔性れ。

「濡れ男-nureo-」(モバイルメディアリサーチ)「彼のセリフでわかる男ゴコロ」(大和出版)などがある。

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乳がんコラムアングリーおっぱい

イラスト・春乃れぃ

001話 | 002話 | 003話 | 004話 | 005話 | 006話(最終回)

5話

目鼻立ちのはっきりとした、女優の山村紅葉さん似のステキな女医さんが、
あたしのおっぱいにジェルのようなモノを塗って、塗って、塗りまくっている。

その様子を背後から見ていた、ドクター谷啓が一言。

「立派なオチチして」

いつもなら即座に、「オチチて! それオッサンの言い方やん!」と、ツッコミを入れるはずなのに、さすがに今回ばかりはそんな余裕などなかった。ただただ、ベッドの上で身体を一直線にして、ネバネバとしたものを塗られているのみ。

「これは、何をしてるんですか?」
「今からエコー検査をするので、それに必要なゼリーを塗っているんですよ」

と、山村紅葉似がニコリと笑った。

仰向けに寝ているあたしの頭の右斜め上に、小型テレビのような物が置いてある。(まさか、盗撮?)なんて不届き千万なことを思いながら、チラチラとそれを見ていると、ドクター谷啓と目が合った。

「今からこのプローブという専用の機械を、あなたの乳房すべてに当てて、シコリの有無や形、構造を調べます。そのすべてが、このモニターに映し出されます。痛くないからね? この先生が調べたあとに、僕がもう1度調べるからね」
「じゃあ、あたしもこのモニターを見ていたら、乳がんのシコリを見つけられるんですか?」
「んーとねえ、僕たちの表情を見てる方が分かるかもしれないよ」

そう言うと、ドクター谷啓は後ろ手にカーテンを閉めて、診察ベッドの傍を離れた。

先生は、僕たちの表情を見てれば分かるって言ったけど――あたしは、生まれて始めてみる自分のおっぱいの内部構造に興味津々で、首が攣りそうなムリな姿勢でモニターを覗き込んでいた。

マンモグラフィ、エコー検査、触診。
すべての検査が終わり、あたしは診察室を出て待つように指示された。

「きっと大丈夫、絶対に大丈夫」という気持ちの中に、
エコー検査の後、ほんの少し態度と声のトーンが変わった先生たちの様子が入り込んでくる。

『大丈夫。
あたしの悪い予感は、昔からたいてい外れるじゃないか』

自分自身に何度そう言い聞かせても、強く握った掌は汗でべっとりとしていたし、足の震えは止まらなかった。

「春乃さん、中へどうぞ」

びびっているのを悟られないように、
わざと大きな声で返事をして、わざとヘラヘラと笑いながら、診察室の中へ入った。

「今日は時間あるね? 今から細胞をとりましょう。
そんな顔をしなくても大丈夫。ちょっとチクッとするぐらいだから」

先生は真っ直ぐにあたしの目を見ながらそう言った。

つづく