作家・コラムニスト
数年前、乳がんを発症。温存手術により、無事摘出。現在、経過を観察(?)している。
台湾人と日本人のハーフとして台湾に生まれ、幼少~思春期を米ロスで暮らす。
2005年ケータイ書籍「恋愛博打」で作家デビュー。
歯に衣着せぬ毒舌がうけ、その後も「起動戦士 濡れ男」「女王さまがロバに鞭」などのケータイ書籍や雑誌コラム、紙書籍などを中心に活躍。
並み居る有名作家人を押さえ、各ケータイ書籍サイトの売り上げランキングに続々とベストテン入りし話題となる。
著書に「モテれ。」「魔性れ。」
「濡れ男-nureo-」(モバイルメディアリサーチ)「彼のセリフでわかる男ゴコロ」(大和出版)などがある。
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イラスト・春乃れぃ
001話 | 002話 | 003話 | 004話 | 005話 | 006話(最終回)
勇気を出して(?)、乳がん検診の費用がいくらくらいになるのかを調べてみると、意外なことが分かった。
ちっとも高くない! むしろ想像していたより、安い費用で検診を受けられる。
地域によっては無料検診のところもあるし、あたしが調べたところでは高いところでも8000円程度。
「なんだ、こんなに安かったのか」
――ここからが、あたしの悪いところである。「安いからいつでも受けられる」そう知ってしまったあたしは、「じゃあ、別に今すぐに受けなくても大丈夫やん」と、思ってしまった。「この間までは違和感を感じたけれど、今はそれも感じなくなったし、安いんだから次また異変を感じたらその時に検診を受ければいいや」と、思ってしまったのだ。
これが大きな間違いだったと気がついたのは、
秋が深まって、冬が終わり、本格的に春が始まろうとしていた頃。
「……やっぱりまた胸に違和感を感じる」
うつ伏せに寝る。身体を横にして寝る。仰向けに寝る。
どんな寝方をしても左胸に痛みとは違う、“なにか”を感じる。
そして数ヶ月前に感じたものよりも、それは『大きく』なっているような気がした。
痛みでもないし、乳頭から体液のようなものが出ているわけでもないのに、なんだろう……。
家の近くの内科・外科クリニックで、乳がん検診をしていることは数ヶ月前に調べ済み。
「行ってみようか」
「でも……もし乳がんだったら、それこそ莫大な費用がかかってしまう。そんなお金、どこにあるの?」
「でも……」「でも……」「でも……」
『でも』のオンパレードで、一歩も前に進めない。
訳あって両親と絶縁中のあたしは、親を頼れない。この当時、まだまだ新人で無名の物書きだった(←これは今もやけど)あたしに入ってくる収入なんて、たかが知れてる。彼に相談すれば、彼はきっとどこからか費用を調達してくるだろうけど、そんなことはさせたくない。だって彼は貯金のすべてを使って、“泥沼の中”で漂っていたあたしを救い上げてくれた人だから、これ以上、金銭面での心配や迷惑を、かけたくない。
検診を受けて、大丈夫なら問題はない。だけどもしも、大丈夫じゃなかったら? 『乳がん発覚』の怖さよりも、手術費や入院費、そして治療費を想像する方が怖かった。羽の生えた1万円札たちが、次々に青空の向こうへ消えていく映像が、頭の中に広がった。あはは、面白い。って、ぜんぜんオモンナイわ!
「どーしよう……」
とりあえず、検診だけでも受けようか。
結果と、その後のことは、その時考えればいいか。
点けっぱなしのテレビからは、『今日の占いカウントダウン』が流れていた。普段は占いなんてたいして気にもしないけれど、今日のかに座の運勢は、「決断は早いほうがいい」らしい。
仕事机の上には、当時ヘビー喫煙家であったあたしのバージニアスリムライトが2箱乗っている。
「そうや。これを投げて、2箱とも表が出たらすぐに検診の申し込みをしよう。2箱とも裏だったら、あたしは乳がんじゃない。1箱が表で、もう1箱が裏だったら……誰かに相談して、その人の意見に従おう」
***
「お忙しいところすみません。
乳がん検診を受けたいんですが……
はい、あっ、名前は春乃と言います。初めてです」
フローリングカーペットの上には、表を向いた2箱のバージニアスリムライトが転がっていた。











